Mynavi Will
椅子をひとつ置いただけで、社会を変えることができる
“スーパーやコンビニなどでレジを打つ従業員は立っているのが当たり前”と思っている人は、まだ多いのではないか。
しかし、その“当たり前”はここ日本だからであって、海外に目を移すと座ってレジを打つのが当たり前といった国も多い。
そんな立ち仕事の負担解消に取り組んだのが、マイナビのアルバイト情報サイト『マイナビバイト』だ。
それはどんなきっかけで始まり、どのような効果をもたらしたのか?デジタルテクノロジー戦略本部の進学・バイトプロモーション部長・鈴木里彩子に聞いた。
まず、接客は立ってするという世の中の風潮を変えていこう
「きっかけは、協力会社の方からのご提案でした。その方が海外に行ったとき、スーパーのレジ担当の従業員が座ってレジを打つのを見て、なぜ日本では立って接客するのかと疑問に思ったそうです。これは日本でもできるのではないか。マイナビで協力企業を募ったらムーブメントが広がるのではないかと思い、私に話をしてくれました。」
『マイナビバイト』の主なクライアントには小売店が多く、おおむね人手不足が悩みのタネだった。
“立ちっぱなし問題”を解決できれば、働くことの身体的負担が軽減され、人材不足の解決や長く働ける社会を実現できるのではないか?と考えたのだ。
「企業が人手不足を解決するためには、新規の応募を増やすことと、採用した働き手の定着率を上げることが必要です。そのために職場環境を良くしたいけれども、何をしたら良いか分からないという声も多かったですね。一方で、働く側としては、“立ちっぱなしは肉体的に負担が大きい”、“接客業は好きだけれどもずっと立っているのはつらいので違う職種を選ぶ”といった声があり、“立ちっぱなし問題”の解決は雇う側にも、雇われる側にも良い結果をもたらすのではないかと思いました。」
仕事での“立ちっぱなし”の解消。そのための具体的な手法は、どのようにして考えたのだろうか。
「私はプロモーション担当ですので、まず世間への見せ方から考えました。どういうPRをしたら世間の皆様が賛同してくれるだろうかという観点で、広告・クリエイティブを考え始めましたが、いっそのこと協力会社とともに椅子から製作してしまおうと考え、プロジェクトを進めていくことにしました。」
こだわったのは、椅子の大きさと座りやすさ
このプロジェクトは“座ってイイッスPROJECT”と名付けられ、進められていったが、その中心となるアイテムが椅子だ。
「ポイントとなったのは、日本の店舗は狭いのでコンパクトなものであるということ。それは、店舗面積という物理的な理由のほかに、あからさまに座っていることがわからない、よく見たら座っていることがわかるぐらいの方が、従業員も周囲からの視線を気にせず座りやすいのではないかということがありました」
パイプ椅子を作っているメーカーにお願いし、サンプルを作ってもらいながら試行錯誤し、大きさや形を決めていった。
「とにかく、使いやすいもの、座りやすいものということで、座面の角度や軽さにはこだわりました。どんな方でも使えるように、いろいろな身長の方に座ってもらって微調整をしながら作っていったんですが、満足のゆくものができたと思います」
この椅子をはじめとして、告知用のツールなどが決まったところで、クライアント企業に椅子の導入を提案していった。
「最初はマイナビとお取引きのあるクライアントさんを中心にお声がけをしていきました。 “良いことを始めたね”という好感触で、大手企業さんが導入を決めてくださったこともあり、“じゃあ、うちもやろう”と賛同してくださる企業が増えていきました。現在導入いただけた企業は200社、椅子は1000脚ほど(2025年1月現在)になりました。」
いろいろな人と協力したからこそ実現できた
社会の常識を変えることから始まった “座ってイイッスPROJECT”は、導入企業も増え、クライアント企業はもちろんのこと、求人に応募するユーザーにも歓迎されているそうだ。
「あるクライアントの採用担当者の方に聞いたのですが、応募者の面接の時にその企業が“座ってイイッスPROJECT”に参画しているので応募したという方がいたそうなんです。参画してよかったという感想をいただいて、私もとても嬉しかったです」
鈴木は、『マイナビバイト』のプロモーション担当者として、何を訴求したら良いか、どうやって同種の媒体との差別化を図れば良いのか、悩むことも多かったと言うが、このプロジェクトの成功は確かなやりがいとなったのではないだろうか。
「社会への貢献というのは、どんな仕事でも共通してやりがいになると思うのですが、その意味でもこのプロジェクトは大きな手応えを感じることができました。加えて、ご協力いただいたクライアント様、実施いただいた店舗の方々、そしてマイナビ社内の営業担当者など、とにかくいろいろな人と協力できたからこそ、ここまでできたのだと思います。そこも仕事のやりがい、面白さだと感じました」
仕事や働くことへのポジティブな発信で、働く人の意識を変えたい
鈴木は、“座ってイイッスPROJECT”に関わったことにより、些細なことからでも、職場環境を改善したり、働く人の考え方を変えることはできるのだという確信を得たようだ。
「今回は、座ることが当たり前ではない場所に、椅子をひとつ置いただけです。でも、それがポジティブな反応を引き起こすことができました。『マイナビバイト』には“ご意見ボックス”というものがあって、ユーザーからいろいろな意見をいただきます。私も気づかなかったような問題を提起されることもあるので、小さな意見も見逃さず、良い仕事環境、良い社会を作るために、これからも社内外の皆様と一緒に取り組んでいきたいと思います」
(まとめ)
たったひとつの椅子ではあるが、それをきっかけに働く人が、企業が、そして社会が変わる。アルバイトの求人媒体としてただ情報を掲載するだけではなく、クライアントやユーザーに最後まで寄り添う姿勢が、さまざまな人を動かした結果、“座ってイイッスPROJECT”の成功を引き寄せた。今後の鈴木や『マイナビバイト』のポジティブな発信は、どのような変化をもたらすのだろうか?
【Profile】
鈴木里彩子(すずき りさこ)
デジタルテクノロジー戦略本部 CXマーケティング統括本部 進学・バイトプロモーションチーム 部長
広告関連企業に勤めた後、2018年にマイナビに中途入社。マイナビバイトのプロモーションチームとして、CMやデジタル広告、SNSの運用に携わる。2024年4月よりマイナビバイトとマイナビ進学のプロモーションを担当し、「座ってイイッスPROJECT」の責任者を務める。
【取材・文:定家励子(株式会社imago)】
【写真:吉永和久】