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介護職も社員も。人を大切にする介護プライドを実践。 SOMPOケアの人材戦略とは?

SOMPOケア株式会社 湯浅学 × 株式会社マイナビ 神野達郎

 

最近よく聞かれる“2025年問題”。その時我々が直面するとされているのは、ひとつは企業の維持存続を左右する危険な“崖”、そして人材難だ。国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となる状況を目前にして、介護のリーディングカンパニーとして業界を牽引するSOMPOケアは人材の採用・育成にどのように取り組んでいるのか。マイナビで福祉・介護領域の採用促進を担うメディカル事業本部の神野達郎が、SOMPOケアで新卒採用を担当する湯浅学氏に伺った。

 

新しい仕組みやテクノロジーを取り入れ、みんなで介護の人材不足を乗り越えていく

神野達郎(以下、神野):人材難というと、真っ先に言われるのが介護業界なんですが、介護保険制度が始まった2000年以降、介護就労者はひたすら増え続けています。22年だけ、離職者数が新規就業者数を若干上回ったのがニュースになりましたが、それ以外はずっと増加。でも、介護を必要としている人がそれを上回ってしまっている、伸びすぎている需要に人材の数が追いついていっていないというのが問題ですよね。

 

湯浅学(以下、湯浅):人材不足は、介護業界だけの問題ではなく、今やどこの業界でも起こり得ることになっています。それぞれの業界でいろいろな対策を考えているとは思いますが、介護業界ではアクティブシニアや海外の人材の活用、そしてテクノロジーを導入して介護職の負担を軽減していくというようなことで、人材不足を補おうとしています。

 

神野:湯浅さんも他業界からの転職で、SOMPOケアに入社当初、3年間施設で働いていたんですよね?その当時と今を比較すると、テクノロジーの進化って大きいんですか?

 

湯浅:まず一番に挙げられるのは、さまざまなデータのデジタル化ですね。私が研修で施設にいた頃は、入居者の日々の状態管理はすべて紙でやっていたんです。それが今はデジタルになって、スマホとかタブレットを使っています。業務が効率化できるのはもちろん、データとして全員へ共有できるので担当が代わっても問題ありません。それから、“睡眠測定センサー”というマットレスや敷き布団の下に敷くセンサーがあって、寝ている方の睡眠状況をリアルタイムで計測できるようになっています。それまでは夜勤になると、施設の全部の部屋を夜中に見回らなければならなかったのが、センサーの導入で何か問題がありそうな方の部屋だけ訪問すればよくなりました。そういうテクノロジーの導入で、職員の負担はずいぶん軽減されたと思います。ですから、「介護=キツイ」という昔のイメージから大きく変わってきているのが最近の介護の実態です。

神野:今おっしゃったデータのデジタル化ですが、それがSOMPOケアの大事にしている、カスタムメイドケアの実現にも繋がっているんですよね?

 

湯浅:そうです。利用者はどのような人生を送られてきて、それまでどのように生活されてきたか、そして今どんな介護を必要としているか、それこそ十人十色です。そんな一人ひとりの生活背景や要望の内容は、“アクシスト”という業務支援システムに落とし込まれ、それによって介護の内容や業務表が作られていくので、誰でもそれを見さえすれば同じレベルでカスタムメイドなケアができるようになっているわけです。

 

神野:僕がやっぱりSOMPOケアは介護業界のリーディングカンパニーだなと思うのは、そういう技術や知見を自分たちだけのものにしないこと。SOMPOケアユニバーシティという企業内大学を作ったのも、SOMPOケアが初めてですよね? それから、研究施設“Future Care Lab in Japan”(フューチャーケアラボインジャパン)を設立して、デジタル技術を活用した介護の研究も行っています。業界の最先端でSOMPOケアが取り組んだことを自社だけで留めて優位性とするのではなくて、他社や、ケアラーの方々に広めていく流れを作っているところはすごいですよね。

 

介護現場で必要となる場面を想定し、さまざまな機器の使用法も学べるSOMPOケアユニバーシティ

 

湯浅:それがSOMPOケアが打ち出している“介護プライド”ということなんだと思います。SOMPOグループが“安心・安全・健康のテーマパーク”という考え方で事業を行っているので、人材不足だから仕方がないと言うのではなく、新しいしくみやテクノロジーを取り入れることによって不足を補い、高齢者の方々へのサービスの質を決して下げないようにする。そのノウハウをどんどん発信し、みんなで高齢化社会を乗り越えていこうよということなんです。

 

早期に介護の仕事に触れてもらい、手厚い研修制度で誰もがチャレンジできる仕事に

神野:たしかに、高齢化社会を乗り越えていくにあたって介護業界はとても重要な役割を果たしているんですが、就活生の人気業界ランキングでは下から数えたほうが早い順位を毎年とってしまっています。どうしても低くなってしまうのは本当に残念です。一方で、おじいさん、おばあさんが好きだからとか、これからますます需要が増える介護業界に興味があると言って志望する学生は結構います。そんな状況下で、数百名という単位で新卒者を採用できているSOMPOケアはどんな方策で人材を確保しているんですか?

 

湯浅:日常生活の中で介護にふれあう機会がある人って、ほとんどいませんよね。ですから、就活が始まるタイミングで初めて介護業界を見た人にとっては、どうしても他業界に比べて見劣りしてしまうのは当然だと思います。ですから、子ども食堂を開設したり、子ども向けの仕事体験施設に介護のパビリオンを出展したりして、子どもや若い世代に早くから介護に触れてもらう取り組みを行っています。また、現在就活をしているZ世代に向けては、彼らが情報収集するWEBやSNSにも積極的にアプローチしたり、HPの改修も彼ら向けに行ったりしています。

 

神野:そもそも湯浅さんも、前職はアパレル関係だったんですよね?なのに何故まったく異業種の介護業界に飛び込もうと思ったんですか?

 

湯浅:この業界でなら勝てると思ったからです(笑)。というのは冗談ですけど、これから間違いなく広がっていく業界だろうということがひとつ。そして、前職での接客の経験が生かせると思ったことです。お客様の話をよく聞いて親身になって考え、心の底からの“ありがとう”がもらえるというのは、前職も介護の世界も同じですから。実際に人の役に立ちたいとか、公務員志望だったけれども介護にも興味があってと言って入ってくる人が多いですよ。

 

 

神野:新入社員の研修制度が手厚いこともSOMPOケアの特色だと思うんです。入社後6ヶ月研修があるんですよね? そこまでやっているケースは、僕は業界内でも見たことがありません。極端な話ですが、6ヶ月の研修を行っている途中や、終わってすぐに辞められてしまったら、会社としては大損です。しかし、SOMPOケアでは新入社員がきちんと続けてくれるという確信があるからこそやれることなのでしょうね。だから、介護のことを知らなくても安心して飛び込んでいけるし、実力があれば若くして施設長にもなれるんですね。

 

湯浅:実力主義というわけではないんですが、うちでは新卒の方に限っては、入社後7年ぐらいで管理者になってもらうという方針があります。若い世代に今後の会社や業界を引っ張っていってほしいという思いがあるからです。僕自身、管理者になったのは29歳ぐらいだったんですが、周りはみんな年上の方でした。でも、管理者だからといって、全部自分がやらなければいけないということはないんですよ。周囲の経験豊富な方からいろいろ教えてもらいながら、自分のできることをやっていく。若い人であれば、デジタルが得意かもしれませんし、できることはたくさんあるし、やる気さえあればチャンスはもらえる会社だと思います。

入社時の研修では、SOMPOケアで働くうえで必要となる知識を共通座学研修として行い、それぞれの専門性に合わせた研修を、座学・実技・WEBと内容に合わせて実施している

 

人間性と行動力。人間力を持つ人は介護の世界へ

神野:SOMPOケアは、若い人でもやる気があればチャンスをもらえるというのは、研修制度が充実しているからということもあると思います。湯浅さんが未経験の新卒を採用する上で心がけていることはなんですか?

 

湯浅:意識しているのは学生目線で考えることですね。例えば、様々な選考フローをWEBで出来るようにしています。企業側の目線だけを考えれば学生とは対面で話した方が動機などを聞きやすいというのがあるんですが、学生にだっていろいろすることはあります。何が何でも都合をつけて対面でと望むのは企業だけの都合じゃないかって思います。

 

神野:僕が驚いたのは、内定を辞退した方に“プラチナチケット”というものを渡して、考えが変わってまた採用に応募してくれたら、一次面接を免除されるということです。内定辞退なんかされたら、企業によっては学生に怒る担当者の方もいます。でも、そういう方も歓迎なんですね?

 

湯浅:それは、内定を出しているということは来てほしい人材だからです。しかし、辞退はその方が決めたことなので尊重はしたい。だから、もしまた考えが変わったりしたら是非声を掛けてくださいということで渡しています。実際にそれで来られる方はいますよ。

 

神野:そうなんですね。そういう考え方はまさに介護の仕事をしている会社らしいなと思いますね。介護サービスを利用する方はもちろん、働く社員も大事にする、人間尊重の姿勢ですね。そんなSOMPOケアでは、どんな人材を求めているのですか?

 

湯浅:たとえば、電車やバスで高齢の方にすすんで席を譲るような人間性、そして実際に動く行動力、両方兼ね備えた人間力のある方に来ていただきたいなと思っています。これからさらに少子高齢化が進み、介護業界はますます人が必要となります。その中で、自分らしい介護を求めてチャレンジ、挑戦して頂ける方に来てもらいたいですね。

 

(まとめ)

湯浅氏は、SOMPOケアに入社後の研修期間中、ダジャレや流行語が背中に書かれたTシャツを着て働いていたそうだ。すると、それに興味を示した入居者とは自然にコミュニケーションが始まる。今でも施設を訪問するとブログで紹介されるほど人気があるというのが頷けるエピソードだ。介護の仕事は課題も多く、ともすれば明るい光が見えにくい場合もある。しかし、終始前向きに語る湯浅氏の言葉には、確かな希望が見える。

 

構成・文:定家励子(株式会社imago)

写真:小黒冴夏

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